夏になると、私たちのもとに増えてくるご連絡があります。
「猛暑の中、補助犬が連れ回されている。虐待ではないか」
「犬が暑そうにしている。死んでしまうのではないか」
といった、介助犬の健康を心配する通報です。
中には、介助犬と使用者の後を長時間ついて歩き、その様子を確認したうえでご連絡をいただくケースもあります。
犬のことを心配してくださるお気持ちは、私たちもよく分かります。
※ここに掲載している介助犬の写真は、記事の内容とは関係ありません。
こうした情報が寄せられた際、私たちは通常、
「使用者には、介助犬に無理をさせないよう指導しています」
とお答えしています。
もちろん、それは事実です。
介助犬との生活を始めるための訓練では、介助動作だけを学ぶわけではありません。
犬の健康管理、日々の体調確認、排泄、食事、休息、被毛や肉球の状態など、介助犬と暮らしていくために必要なことを学びます。
当然、夏場の暑さへの対応もその一つです。
しかし、「きちんと指導しています」という説明だけを繰り返していても、この問題はなかなか解決しないのではないかと感じています。
確かに、犬は人間より地面に近いところを歩きます。
真夏のアスファルトは非常に高温になりますし、熱中症や肉球のやけどにも十分な注意が必要です。
だからこそ、私たちも夏場の外出には細心の注意を払うよう伝えています。
一方で、介助犬と暮らしている人にとって、介助犬は「散歩のために連れて歩いているペット」ではありません。
通勤、通院、買い物、行政手続き、人との約束。
障害のある人にも、暑い夏の日に外出しなければならないことがあります。
「暑いから犬を外に出さないで」と言うことは簡単です。
しかし、それによって介助犬使用者自身も外出できなくなるとしたら、どうでしょうか。
夏の間、社会参加を控えなければならないのでしょうか。
ここには、犬の福祉を守ることと、障害のある人の社会参加を守ること、その両方を考える必要があります。
どちらか一方を犠牲にすればよいという話ではありません。
介助犬使用者は、犬と一緒に生活しています。
その日の食欲、排泄、歩き方、呼吸、疲れ方、いつもとの表情の違い。
毎日一緒にいるからこそ分かる変化があります。
もちろん、使用者だから絶対に間違いがない、という意味ではありません。
だからこそ私たち育成団体も、認定して終わりではなく、介助犬と使用者の生活を継続して支えていく必要があります。
ただ、街中で数分間その姿を見ただけでは、その介助犬がどのくらい歩いてきたのか、直前までどこで休んでいたのか、水分をいつ取ったのか、その日の体調がどうなのかまでは分かりません。
犬が口を開けて呼吸している姿だけを見て、「苦しんでいる」「虐待されている」と判断されてしまうこともあります。
心配することと、虐待だと決めつけることは、少し違います。
明らかに犬がぐったりしている、歩くことができない、使用者が犬の異変に気づいていないように見える。
そのような場合には、もちろん見過ごしてほしいとは思いません。
ただ、すぐに「虐待だ」と決めつけるのではなく、
「ワンちゃん、大丈夫ですか?」
と、まず使用者本人に声をかけていただくことも一つの方法ではないでしょうか。
介助犬を心配してくださる気持ちは、とてもありがたいものです。
その優しさが、介助犬だけではなく、介助犬と暮らす使用者にも向けられる社会であってほしいと思います。
介助犬を守ることと、介助犬使用者の社会参加を守ること。
私たちは、その二つを切り離して考えることはできません。
暑い夏だからこそ、介助犬について知っていただく機会になればと思います。